『英雄/HERO』チャン・イーモウ監督(2002年中国)

 金曜の夜、実験装置が自動測定している間、マイカルのレイトショーへ。この映画は予告編を見た時からスクリーンで観ようと決めていた。

 この美しさはどこから来るのだろう。登場人物を絞り込み、不要なものをそぎ落とし、彼らの純粋な精神を際立たせているからか。これは叙事詩だな。階層的なストーリーを衣装やセットの色彩で表すという手法はいい。1度しか使えない手かもしれない。
 歪んだ性癖の人物、心の貧しい人物、腹黒い人物は登場しない。数多くの武闘シーンのいずれも「善vs.悪」ではなく、それぞれが信念を持った魂の対峙である。結果として生きる者と死ぬ者が分かれるも誰もが最後にはわかり合う。勝ち負けではない。そこに共感した。
 昔から中国って「白髪三千丈」みたいなオーバーな表現が好きだよね。そういう大風呂敷的なセンスを映像で表現した結果が、あの信じられないような武術シーンなのだと思う。しかも一昔前のようなチャチな特撮ではなく、最新技術に裏打ちされた凝りに凝った絵作りがなされているので、「そんなん絶対あれへんあれへん」などと心の中でツッコミを入れることもなく安心して身を委ねた。ちょっと笑ったけど。