バカの壁

■『バカの壁養老孟司(2003 新潮新書
 得体の知れない病気で悩んでいる人が、医師から自分の病名を告げられると安心するという現象がある。
 同じように、他者と話が通じないことに悩んでいる人に対して、「それは‘バカの壁’のせいだよ」と告げてあげれば、その人は少しは楽になれる。
 本書の効用は、誰もが感じたことのあるコミュニケーションの難しさを、わかりやすい‘バカの壁’という概念で説明したことである。
 実は3ヶ月前に読了した直後はどう感想を書いてよいかわからなかった。1冊の中で養老さんはいろいろな話をしているが、口述筆記本であるせいもあり、まとまりがなかったし、「何言ってるんだこのオヤジは」と思う箇所も多々あった。飲み屋でオッサンの説教を長々と聞かされているような気分になる。
 3ヶ月経って思うことは、少なくとも上に書いたような効用はあるな、ということ。ただそのために680円払う価値があるかどうかは甚だ疑問だ。いまだに売り上げランキングの上位に居座っているのを見ると、好き勝手なことを喋っただけでベストセラーなんて時給いいなーなどと皮肉な思いに駆られるのだった。