大きな声では言えないが

 昨日の午後、職場で駐車してはいけないスペースに駐車していたら、恥ずかしながら夜になって出口を閉鎖されてしまった。チェーンが張られてダイヤル式番号錠でロックしてあり、これを外さなければ車は絶対に外へ出せない。もうバスもない深夜のこと。家へ帰れないのではないか、と久々に内心パニックになった。
 「誰かの車に乗せてもらう」「朝まで時間をつぶして始発バスで帰る」などの選択肢もあったが、結局ドロボウのように番号錠の数字を 001, 002,‥‥と1つ1つ試して解除番号を探した。時々人が通って恥ずかしい思いをするたび悪いことをしているわけではないと自分に言い聞かせつつ、40分ほどの作業の末についに開く。いつかは必ず開くはずとはわかっていても、開いた瞬間は天に感謝したくなった。

 メーカーが番号錠を作るとき、解除番号は 000 から 999 までまったくランダムに決めるのだろうか。ドロボウが今回の私のように番号を1つ1つ試す場合、おそらく人間の癖として 000 から始める人が多いだろう、それなら解除番号が大きいほうが少しでも時間を稼げて防犯上有利だ。つまり市販の番号錠は解除番号 500〜999 の製品が多いのではないだろうか。こんどホームセンターで確かめてみよう。

 今回の1つ1つ番号をずらして開くかどうか試すという作業もまた単純作業の繰り返しだが、作業中の精神状態は墨擦りや胡麻擦りとは異なる種類のものである。解除番号の1コ手前まではずっと挫折感や絶望感に苛まれ続け、開いた瞬間に急激に達成感が訪れる。ヨロコビは大きいが、精神統一には向いていないな。