映画館の会員制度に関する考察

 金沢にシネモンドという、ちょっと玄人好みのラインナップを上映してくれる小さな映画館がある。東京のユーロスペース、名古屋のシネマスコーレみたいな感じ。
 よくある制度だけど、会員になると安く観られるというので、少しその気になって調べてみた。

 映画鑑賞料は、非会員が前売券で観た場合は1300円。会員は当日でも1000円。入会金1000円、年会費2000円。n回観た場合の支出を比較して、何回観れば元が取れるか算出してみよう。

   1300n≧1000n+1000+2000
   n≧10

 つまり、最初の年は10本観ないと元が取れない。すみません、たぶんそんなに行きません。

 シネマスコーレでも似た制度がある。こちらは鑑賞料が非会員1400円、会員1300円。会費は半年1500円。ただし入会時には無料券が1枚プレゼントされる。

   1400n≧1300(n−1)+1500
   n≧2

 なんと、こちらは入会後半年以内に2本観れば元が取れる。タダ券の威力は大きいのだな。このタダ券が半年ごとにプレゼントされるのか最初だけなのかはよくわからない。もし最初だけなら、半年目以後は途端に元を取るのが難しくなる。半年ごとに入会しなおせばいいのか?

 かたや入会時に入会金を取り、かたや無料券をくれるという対照的な商法が面白い。「初め厳しく後柔らかく」か、「初め柔らかく後厳しく」かの違い。考えてみれば世の中には後者が多いな。AdobeAcrobat Readerだけ無料配布してAcrobatは金をとるのも、Elsevierの学術雑誌が投稿料は無料だが購読料は高いのも、新聞をとり始めると洗剤をくれるのも、みんな後者の戦略に属する。第一印象で好感を持たせる作戦。まあ映画館に関して言えば、やはり新しい客にとりあえず足を運んでもらうには後者の戦略のほうが効果的だと思うけど。
 というわけでシネモンドさん、タダ券ください。