『巣立つ日まで』

■『巣立つ日まで石森史郎脚本(1976.9.6-10.1 NHK
 少年ドラマシリーズの中の1作。ドラマそのものは見たことないのだけど、昔みんなのうたでこのドラマのテーマソングを聴いて心に残った。人前でギター弾いてこれを歌ったこともある。ちなみに三枝成彰の作曲である。今回、少ドラ本でドラマの内容を初めて知った。題名からおおまかに予想がつく通り、中学生の少年や少女がさまざまな出来事を経験して成長していくジュブナイル

 ところが1つ予想外の展開があった。それは主要登場人物の1人である妙子という少女が、家の都合で朝鮮半島へ引っ越していくエピソード。1950〜60年代に盛んに行なわれていた在日の北朝鮮帰国運動だと思われる。数年前に『キューポラのある街』を見るまでその存在すらよく知らなかったが、最近はこのときに北朝鮮に渡った日本人妻の問題で再びクローズアップされている。あれっと思ってよく調べたら、ドラマの舞台設定はリアルタイムではなく昭和34年とのことで、にわかに作品世界の空気が違うものに感じられた。
 妙子の父は北朝鮮出身であることが途中で明らかになる。少ドラでこの題材が取り上げられていたとは知らなかった。いまやドラマ映像は現存せず、原作本も絶版とのことで詳細を知るのは難しい。ただ、友にすがりついて「離れたくない」と泣く妙子の写真を見ると、海を渡った彼女はその後どんな生活を送ったのだろうと思いを馳せずにいられない。きっとこの時代には何十人もの妙子がいたに違いない。

 妙子役を演じた玉川砂記子(紗己子)さんのインタビューが少ドラ本に載っている。とても気さくで陽気な人柄が伝わってくる。現在は声優として活躍中。そしてなんと私の好きな『マヌエロ』をみんなのうたで歌ったのも彼女なのであった。

 気がつけば5日連続NHKネタです(笑)

(追記:在日朝鮮人とその家族が北朝鮮渡航した「集団帰還事業」は1959年12月から1984年7月まで行なわれた。妙子はその第1次の船に乗ったことになる。)