マンガと音楽

■『アルドン荘物語』とり・みき(『膨張する事件』(2002 筑摩書房)所収)
 わずか2ページの作品。本来は音楽ファン向けの本に掲載されたもの。1960年代にニューヨークのアルドン・ミュージック社に集まって来た若きポピュラーミュージシャンたちの愛と希望の物語が、なんとトキワ荘に集まって来た若き漫画家たちの姿になぞらえて描かれている。こういう見立て、大好きだな。(誰を誰に見立てているかは本書を読んでね)
 もっとも私はトキワ荘についてはマニアだがアルドンの名は実は初耳。これを見て笑える、マンガと音楽両方の知識を持っている人はえらい!
(追記:ためしに「カーシュナー 寺田ヒロオ」でGoogleってみた。結果は0件。ま、そりゃそうか)

 でもアルドンもトキワ荘も、1960年前後だからこそ実現できた共同体かもしれず、人が人との距離をおくことを好む今の時代には、集団の密接な人間関係の中から何かを生むような場は実現しにくいのではないか。そんな古き良き時代を懐かしむ気持ちがこの作品には流れているように思う。

 さて、明日から30日まで東京へ出張です。