福袋

■『福袋』ふくやまけいこ(1986 ふゅーじょんぷろだくと
 受験生の頃「コミックボックスJr.」という雑誌は2、3回買ったことがある。プロ漫画家からアマチュアまで、漫画を愛する人々が好きなことを書きなぐる、薄っぺらいが読んでいて飽きない本だった。メジャー漫画誌では見られない、プロの“走り書きの絵”にただよう身近な雰囲気が好きだった。そういえば大学に入ってからあまり読まなくなったな。映画に時間を割くようになったから。

 偶然手にした本書には、漫画作品もだが、「コミックボックスJr.」などに載ったコミックエッセイ(というか落書きページ)がふんだんに収められている。この雰囲気、懐かしいな。
 思えば当時はワープロもネットも普及してなかった時代。アクティブな人々は口コミで情報を仕入れ、言いたいことをキーボードでなく紙にペンで書き連ねていた。ふくやま氏当時22〜23歳。毎号2〜4ページの落書きページに「もう書くことないよー」「眠い、寝かせてくれー」などと叫びつつ、ちゃんと手書き文字とイラストで紙面をぎっしり埋めている。 好奇心の対象は幅広く、とどまるところを知らない。絵も達者だ。

 彼女には及ばないが、自分も、あの頃は今よりも好奇心が強く、心の赴くままに行動していたな、と懐かしく思い出した。
 毎日キーボードを叩いて心に浮かぶことを記す者として、もっと好奇心を持ちたいと改めて思うのだ。