「強い」リーダー

 自分も含めてトランプが勝つと予想していた人は日本にほとんどいなかったようだけど、米国の世論調査では数ヶ月間、上下動はあったものの、ヒラリーとトランプの支持率比が 50:50 からそう大きくずれたことは無かった。なので冷静に確率論を適用すれば「絶対にヒラリーが勝つ」と断言できる状況ではなかったはずだ。そう考えると、皆が口にしていたヒラリー勝利説は基本的に「トランプが勝つことはないと信じたい」という希望的観測だったのだと思い当たる。なんだ、「原発が事故を起こすことはないと信じたい」と同じではないか。

 日本の官邸にとっても今回の結果はまるで原発事故のように想定外で、対応に右往左往している様子。「この道しかない」をスローガンにして、反対意見に耳を貸さずに一つの方向に突き進み、長期にわたって安定した地位を保っている安倍政権だが、その猪突猛進さはこういう事態が起きた時に足元をすくわれる。思慮深いリーダーは望ましくない事態もあらかじめ想定し、柔軟に対応できなければならない。逆に言うと思慮が浅いことが「強いリーダー」であるための必要条件とも言えますな。

 トランプと安倍は似ている点も違う点もあるが、今までの政治の常識が通用しないこの状況は、日本の政局の展開を考える上でも参考になる点が多いにちがいない。今後、氏が大統領になってもこれまでのような暴言を繰り返すのか、あるいは政治経験の無いこの素人大統領を議会や省庁や大企業が制御して別人のように大人しくしまうのか、はたしてトランプ政権は4年も持つのかどうか、注意して見よう。