NEW HORIZON

財団法人教科書研究センター附属教科書図書館

 以前、フランス語の勉強のために、自分がかつて使った中学の英語の教科書の本文をまるまる仏訳するのが効果的なのでは、と提案した。ただ私は中学の教科書類を捨ててしまったのでそれをするのは難しいと書いた。「不可能だ」と書かなかったのは、東京都江東区にある教科書図書館へ行けば過去の教科書を閲覧できることを知っていたから。それだけのために行くのは少し迷ったけれども、せっかくの一時帰国の機会なので行ってみた。

 東京書籍版の中学英語教科書は昭和40年から発行され始めたらしい。教科書検定に合わせて3年ごとに版が変わり、我々が中2で使ったのは昭和52年版。鈴木和夫氏による挿絵のファニーな絵柄が私は好きだった。主要キャラのマイクとキャシーは覚えていたが、マイクが過去に日本に住んでいたという設定や、サンフランシスコのマイクの家の近くに引っ越してきた日本人少年アキオの存在はすっかり忘れていた。アキオは自分より背の高いアメリカ人の女の子に対しても胸を張って堂々と英会話している。見習わなくては。

 今回は館内にノーパソを持ち込んで、中2の教科書の本文全てと、中1のフレーズのいくつか(仏語訳が難しそうなもの)を書き写してきた。恥ずかしながら中2の英語でも今の自分に身に付いておらず「ああ、こう言えばいいのか!」と思うようなフレーズもいくつかあった。思うに、概して日本人はフランス人と同じくらい英語が下手だ。しかし誰でも中3までの学校英語を完全マスターすれば、外国人との会話にも臆する必要はないほどの英語力が身に付いていると言ってよい。みんな卒業したとたんに習った内容を忘れるだけだ。もし皆が中3までの英語教科書を保存しておいて、時々懐かしむ程度にパラパラ開いたりすれば、それだけで日本人の英語レベルはフランス人より高くなると思うのだが…甘いかな。