網戸

 新アパートと旧アパートを比べると、何と言っても交通の便が良くなった点は嬉しい。新アパートは目抜き通りに面していて、職場へ行くのも共同研究先へ行くのもバス1本で済む(以前は2本乗り継がねばならなかった)。また部屋数・総面積は増え、にもかかわらず家賃は少し安くなった。べつにボロアパートなわけではない。最上階で半分屋根裏のような部屋だからだと思う。
 難点は、階段を4階分上がらねばならないこと。家具付きでないこと。大通りの傍なので騒音があること(窓を閉めれば静かだけど)。そして暑いこと(窓を開ければ風が入るけど)。

 旧アパートにいた昨年は、外が蒸し暑い日でも自室にいれば全く暑さを感じなかった。窓を開ける必要もなかった。地階で直射日光を避けられたのもあるだろうけど、崖の前に建っていたことで建物全体が自然冷却されていたと思う。崖の横穴に作られたワインカーヴのように。

 これからの暑い季節、とりあえず窓を開けて過ごせるようにしたい。そのためには(騒音は我慢するとして)虫を遮断する何かが欲しい。しかし窓は中心を通る水平な線を軸に前後に回転する形式で、網戸の類いを設置するのが幾何学的に難しい。暑い → 窓を開けると虫が入る → 網戸をつけにくい、というジレンマはちょうど前職場のオフィスの状況と同じだ。ヨーロッパで同じ悩みに直面するとは思わなかった。
 町を歩きつつ観察してみると、窓を開け放している部屋が多い。彼らはどうやって虫とつきあっているのか?