晴のち曇 雨降りそうで降らず

 昼過ぎから La Riche Soleil へ買い出し。一旦帰って今度は自転車で市街中心部へ。米とズボンを買う。
 先週の「音楽の祭日」以来、同僚たちとギター話になることが多く、「やっぱギターあるといいなー」程度の軽い気持ちで、町でギターを売っている店を2軒覗く。1軒目は専門店で、新品か価値の高い骨董品ばかり。安くても €170 くらいする。2軒目はよろずディスカウントショップ。1本だけ店頭にあるギターが €20 という激安価格。どちらも(別々の意味で)ちょっとすぐには手を出す気になれないな。自転車を買った時より慎重になっている。買うかどうかも自分の中で確定していない。

 日本で普段食べていた沖縄の黒糖がフランスで手に入らない、とパリで友人夫妻につぶやいたら、奥さんが「カソナードというフランスの砂糖が似ている」と教えてくれた。今日スーパーで探し、カソナード・キュイヴレーという焦げ茶色の砂糖を買ってみた。帰って食べたらまさに黒糖そっくりだった。ありがとう奥さん!

 昨日の流れで改めて『星の王子さま Le Petit Prince』についてネットで調べる。じつは少し前にもこの作品の日本語版を入手しようと試みて、著作権は消滅しているはずだからひょっとして青空文庫にあるんじゃないか?と思ってチェックしたところ、サン=テグジュペリの作品リストには一見関係なさそうな邦題の作品1作しかなかったので、諦めた。ところが、昨日になって知ったのだが、この『あのときの王子くん』という邦題をつけられた作品こそ、「Le Petit Prince」の新訳に他ならなかったのである!
 早速ダウンロードした。翻訳者大久保ゆう氏の後書きを読むと、長年にわたり親しまれて来た『星の王子さま』に代えて『あのときの王子くん』という邦題を付けた理由が詳しく述べられており、それは納得させられるものだった。翻訳という作業に対する氏独自の理論と信念のゆるぎなさが伝わって来た。
 しかしこれがもし大手出版社からの書籍刊行だった場合、売り上げを懸念する編集部はおそらくこの邦題に難色を示しただろう。青空文庫だからこそできた自由な試みだったのだな。この試みは確かに一部で受け入れられつつある。10 年、20 年後にはこの作品を『あのときの王子くん』という邦題で記憶する人が一定の割合を占めているやもしれない。正直、今はこのタイトルを見るとつい猪木の顔を思い浮かべずにはいられないけど。