金属疲労

 朝から夜まで測定。それと並行して論文の英文改稿。午後に元の上司の先生が来学したので論文打合せ。また不要になった棚を学生に手伝ってもらって倉庫へ運ぶ。並行してオープンラボの続き。これから短い書類を1つ書かねば。

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 エキスポランドの事故の件、掲示板にも自分の考えを書いたけど、ここでも少し。

 2月に行なうべき分解検査を5月に延期したことが事故の主要因であるかのように多くの報道で言われている。まるで「1年ごとに分解検査していれば絶対に事故は起こらない」とでも言うかのようだ。もちろん絶対などということはない。言えるのはせいぜい「1年ごとに分解検査していれば事故の起こる確率を低くできる」ということ。

 たしかに結果的には、2月に検査を行なっていれば今回の事故は回避できた可能性が高い。しかし、2月では大丈夫で5月では危険という理屈には疑問が残る。1年のところを1年3ヶ月に延ばしたらそんなに危険が増すのか? その3ヶ月間に急激に金属疲労が進むとは思えないのだが。

 ガスボンベなどの圧力容器では「この圧まではガスを詰めても OK」という許容圧力は「これ以上圧を上げたら破裂する」という限界圧力よりも十分低い値に設定するルールになっている。それと同じで、もし1年3ヶ月という周期が本当に危険なものであったら、マニュアルに記載された1年という周期も余裕がなさ過ぎるように思われる。
 逆に、もし1年という周期が十分余裕のあるもので、1年3ヶ月でも本来は危険が少ないはずのものであれば、もう1つの可能性として、じつはエキスポランドが年1回の分解探傷試験もきちんと行なっていなかった、ということも考えられる。こうなると非難されても仕方がない。

 ところで昨夜の『報道ステーション』を見ていたら、キャスターがこんなことを言ったので驚いた。
 「我々の取材で、超音波検査をすれば金属疲労も一目瞭然であることがわかりました」
 超音波検査って基本的な探傷手法だよ! こんなふうに自分たちだけが知らなかったことをあたかも世界的新発見のように「‥‥がわかりました」と言ってしまうことが報道にはよくある。あまり報道を過信しないほうが良いと思った。