CO2と温暖化

 昨日会った共同研究者G氏との雑談は実のあるものだった。イタリア人だが、我々がイタリア人に抱きがちなイメージとは違い、原発や環境問題について、世論やマスコミに流されずに自分の意見を持ち、真面目に語る人。その彼が「CO2 増加が地球温暖化の原因だとする説はインチキだ」と断言する。同様の温室効果ガスである水蒸気に比べてほんの僅かしか大気中に含まれない CO2 が、温暖化の主要因であるはずがないと。

 たまたま私も日本人研究者の書いた同様の主張の本を最近読んで、何が正しいのかわからなくなっていたところだったので、この雑談にさらに後押しされて、昔買った『不都合な真実』の本を引張り出してパラパラ見てみたりする。なるほど、ゴア氏のプレゼン能力の高さには昔も今も感服するけれど、科学的な論理立てが弱いな。肝心なことになると「世界中の科学者が同意しているのだから正しいのだ」で断定する手法が目につく。近年の気温と CO2 濃度の密接な相関関係がグラフで示されているものの、CO2 が「原因」で温暖化が「結果」だという決定的証拠は示されていない。逆に温暖化が「原因」で CO2 増加が「結果」かもしれない。そう主張する研究者もいる。

 数の上では CO2 犯人説を支持する派が大多数で、CO2 シロ説をとる人々は圧倒的に不利。でも温暖化という現象が複雑であるのは確かで、CO2 がどの程度寄与しているかを正確にはじき出すのは極めて難しいように思われる。私は天の邪鬼なので「皆が言うから正しいのだ」という立場だけは取りたくない。しばらくは文献に接して自分の頭で考えたい。今日ここではどちらを支持するかは決めず、単に問題を書き留めておく次第。
 少なくとも、何故 CO2 犯人説がこれほどの大多数に支持されるに至ったのかは、知っておく必要がありそうだ。
 あと、いずれの説が確からしいにせよ、鳩山氏の「25% 削減する」公約が、彼の首相時代の発言の中で最も軽はずみなものの一つだということは書き留めておきたい。